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□■男・大吉■□  ~生きてただけでラッキー! だから大吉!!~

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2009年 01月 21日

《21》命のサイン

◎ココまでの過程◎
やっと食べ物を口にしたと先生から告げられ、幸せをかみ締める私たち。
退院したら一緒に暮らすんだと決意した私たちは、それがせっかち過ぎる行動とわかっていながら、猫用ケージを買いに飛び出した。
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ホームセンターまでの道のりを、いつもよりパワフルにバイクを運転する鶴見さんの後ろで、私は体全部で猫の事を思い出し感じていた。

それこそ五感六感全てを使い、彼のニオイ、感触、触った時に聞こえたであろう彼の体毛と私の手の平の擦れる音…

全部全部…!
いっぱいいっぱい…!!

一つ一つの瞬間の味わいをデフォルメ気味に思い出しては悶え、にやけ、私はちょっとした危険人物になりつつあった。

しかたない。
それもこれも猫くんのせいだ。
食事をした行為が、副作用なのかたまたまなのか、正解がどれにせよ、食べ物を口にしたという事は、食事を取らなかった理由が、犬歯のせいではないという事。
それが心底嬉しかったし、抜歯を断る事が間に合い、私は本当に安堵していたのだ。
だから今はちょっとくらいアホ面を国道にばら撒いたっていい。私が許可する!

もちろんまだまだ心配の種だらけなのは百も承知。
脳障害の事、見えない目、聴力について、グルグル回り、意識のない表情…
キツイ。
どれも本当にキツイ。
本当は、心なんて折れて砕けて粉々になりそうだったけれど、それでも食べる事は生きる事だから。

真っ暗で何も聞こえない孤独などこかで、猫が絶望を味わっているとしても、食べるという事は、彼の中のうんとうんと深い、もしかしたら宇宙に近いところからの、「生きたいんだ」という意思表明なんだと思った。

猫からのサイン。

それは振り払おうにも振り払えない、不安で震える私自身の全てへジワジワと染み込み、あっという間に私をバラ色に染めた。

バラの色は、愛の色。

愛の色に染まった私は、もっともっと強くなって、優しくなって、猫を守っていけそうな気がした。

だから猫くん、うちへおいで。
退院したら、一緒に暮らそう。


「鶴見さーん!もっとバイクぶっ飛ばしちゃって――!
でも安全運転でよろしくどうぞーーー」


バラ色はちょっと無理だけど、あなたが安心して過ごせる素敵なケージを探してくるからね。

猫と暮らす決意をしたからか、この時、頬にあたる風がいつもよりずっとずっと気持ちよかったんだ。



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by acchan-man | 2009-01-21 17:29 | 大吉の歩み


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